がん と 手術 について
がん 治療の基本は、あくまで早期発見と早期治療です。
ですから、早期 がん と診断されたら、すぐに手術というのが現状に則した治療方法といえます。つまり、 がん は切除可能な範囲にあるのであれば切除した方がいいでしょう。
しかし、手術しても がん の種類やステージ(病気の進行度)によっては再発の危険性が高いものもあるわけです。
例えばステージ3の人を手術した場合に、5年生存率が50~60%です。と説明されたとしましょう。
この時に手術以外の治療法を選択した場合、手術と同じような5年生存率が期待できるかといったら、おそらくそれより低く10~20%程度でしょう。
そうすると、手術によって50~60%の5年生存率はまず確保しておいて、それにさらに何か補助的な治療をしてさらに確率を上乗せしていく方法を考えるか、最初から手術しないで10~20%の確率にかけるかっていうことの選択になります。
手術の中には非常に難しい手術、あるいは日常生活に影響があるような手術がたくさんあります。
ですから、そこは本人の価値観だとか人生観にかかってくると、私は思います。
70%くらいの確率で治ると言われても声が出ないとか、足を一本切断しなくてはいけないとか顔の半分を切除しないといけないとか…日常生活に大きく支障をきたすような手術方法ってたくさんあります。
そういう治療法を提示された場合に、医師側の価値観で話しをすれば、日常生活に支障があろうがなかろうが、生きるということを優先に考えれば手術が最良の方法であると薦めます。
患者さんが日常生活に支障があっても、先ず長生きをすることを優先して手術の効果による70%を確保したいと考えるのであれば手術を選択する。
いやそうではなくて、声が出なくなったら生きていても意味が無い。だからその10~20%の効果しかなくても、手術以外の治療法を納得して選択する。
どちらを選択したとしても、自分が納得して選んだのであれば、それはそれで正しい治療法だと思います。
患者さんによっては「確率が低いといってもその中に入ればいいわけですよね。」と言われる患者さんもいるわけです。 逆に治癒率は高くてもそこから外れることだってあるわけですから、そういうことも知ったうえで選択して欲しいと思います。
納得できる治療法かどうか?というのは、我々医師が一方的な価値観だけで押しつける治療法ではなく、患者さん自身の価値観や人生観などを十分に考慮したうえで選択した治療法ということになるわけです。
私自身が がん になった場合に手術しても治る確率が20~30%と分かった時、私はどうしても手術を受けたいと思うかといったら、おそらくそうは思わないと思います。
だから治療法は、 がん の進行状況と手術方法とで全く考え方が変わってくるものだと思います。
手術を受けるかどうか、それは がん の進行状況と手術方法を理解し、自分自身の納得のうえで選択して欲しいと思います。
「元近畿大学腫瘍免疫研究所 丸山医師」